2024年1月、私たちはある保育園のホームページを全面リニューアルしました。問い合わせのきっかけは「園児募集が厳しく、園の魅力が十分に伝えられていない」というご相談。スマートフォン未対応、採用情報も未整備、情報が数年止まったままの状態でした。 制作では、デザインだけでなく「導線設計」「写真の選定」「更新しやすい構造」に重点を置き、**保護者にも求職者にも“伝わる設計”**を心がけました。 公開から2週間、サイト経由で園見学の申込が3件、メール問い合わせが5件。3ヶ月で職員も2名採用に至り、園内では「これだけ変わるとは」と驚きの声があがりました。 そしてさらに意外な形で「変化」が訪れました。 サイトが“きっかけ”になり、情報発信が始まった リニューアルからしばらく経ったある日。園のご担当者からこんなご相談をいただきました。 「先生が『またブログを書いてみようかな』と言っていて…、更新方法を改めて教えてもらえますか?」 ホームページをリニューアルしたことで、園内に「何かを発信してみよう」という空気が少しずつ生まれていたのです。とくに私たちが設計段階から意識していたのは、“書くハードルを下げる”ための工夫です。 WordPressベースで、写真と文章を入れるだけで更新できる構造 テキスト量が少なくても成立するブログテンプレート スマートフォンからでも管理画面へ簡単にアクセスできる設計 これらの要素が、「ちょっと書いてみようかな」という動機を後押ししていました。 情報発信が“現場”を動かす瞬間 制作時、私たちは「園のことを外に届けるメディアとして、ブログを活用できる構造」にしていました。とはいえ、最初から頻繁に更新される園は多くありません。日々の業務に追われ、文章を書く時間が取れない現場では「発信」は後回しにされがちです。 ところがこの園では、週1回ほどのペースでブログが更新されるようになっていきました。 それを見て、他の職員の方からも「今日はこんなことがあったよ」「この写真、ブログに載せられそうですね」といった声が自然と出るようになったとのこと。園内に小さな“メディア意識”が育ち始めたのです。 「外に届ける」から「中で気づく」へ 私たちは、ホームページ制作を“伝える仕組み”として捉えがちです。もちろんそれは間違いではありませんが、同時にホームページは「内側を見つめ直す装置」でもあると感じています。 ブログを書こうとすると、何を書くかを考えます。日々の出来事を振り返る中で、園の強みや日常の価値をあらためて認識することができる。実際、この園でも「こんな当たり前の日常が、外の人にとっては価値なんですね」と担当の方が話していました。 “続けられる”設計が、発信文化を支える 今回のケースで特に大きかったのは、「園内で発信が続いている」という点です。それを実現するには、次のような制作側の視点が必要だと考えています。 1. 初回導入時の“余白設計” 最初から完璧なサイトにしようとすると、運用が重たくなります。私たちは、あえてシンプルな構成でスタートし、運用しながら必要に応じて拡張できる設計にしました。 2. 管理画面のレクチャーとマニュアル提供 「書きたいけど、書き方がわからない」を防ぐため、管理画面の操作方法をオンラインでレクチャー。簡単な更新マニュアルもPDFで納品しています。 3. 更新しやすい写真・文章の型を提供 たとえば「1日の流れ」や「職員インタビュー」などは、テンプレートとして汎用性を持たせ、どの職員でも無理なく更新できる構造にしています。 こうした“続けられるための仕組み”があるからこそ、現場が発信に前向きになり、運用が止まりにくくなっていくのです。 ブログが園の採用力を高める理由 近年、求職者が重視するのは「園の雰囲気」や「人間関係」。ブログを通じて日常の様子や保育方針が自然に伝わってくる園は、それだけで信頼につながります。 実際、今回の園でも「ブログを読んで園に興味を持ちました」といった応募者が現れています。求人票や写真だけでは伝えきれない“人の気配”を、ブログは届けてくれるのです。 ホームページは“メディア”になる 私たちはホームページ制作を、「採用できる」「集客できる」ための“機能”として提供していますが、その先にあるのは「園が自走する力」を持てるかどうか、だと考えています。 完成して終わるサイトではなく、更新されるサイト、伝えるサイト、動きのあるサイト。 そのためには、“書きたくなる設計”が必要です。私たちは今後も「見た目のデザイン」だけでなく、「発信が自然に育つサイト設計」に力を入れていきたいと考えています。 言葉にできる園は、信頼される ブログが再開された背景には、「伝えたいことがある園であること」「それを言葉にできる環境が整ったこと」そして「発信しても大丈夫だと思える安心感」がありました。 制作会社として、そのすべてを設計に込めることができるのは、私たちにとっても誇らしいことです。